私の息子が、 JIA (Juvenile Idiopathic Arthritis) 若年性特発性関節炎 と診断を受けたのは10歳の時です。JIA (Juvenile Idiopathic Arthritis) 若年性特発性関節炎 は、簡単に言うと小児リウマチです。
カナダでこの診断を受けるまで、6ヶ月掛かりました。カナダでは医療が無料で受けることが出来る反面、日本の様に簡単にMRIを受けることが出来ません。息子の様に診断まで時間がかかることが多々あります。多分、日本の医療だったら、もっと早く診断が付いたと思います。
それでも、カナダにいたからこそよかった面もあります。私達家族は、BCチルドレンホスピタルのある、バンクーバー郊外に住んでいます。リウマチの治療に関しては、北米の方が日本より進んでいるらしく、BCチルドレンホスピタルのリウマチ科のチームは、その分野では有名だそうです。3ヶ月ごとの定期健診も、自宅からすぐ通うことが出来ますし、治療薬の殆どをBC州が補償してくれています。
小児リウマチの場合、完治はしませんが、寛解と言って、薬が無くても症状がなくなる状態になるケースもありますが、息子の場合は多発性のリウマチだったこともあり、18歳になる今でも薬なしでは症状が出てしまいます。
今でも後悔することは、もっと早く診断を受けて治療を始めていれば、寛解できていたんじゃないかと言う事です。
今回は、息子がこの病気だと診断を受けるまでの経緯をお話しすることによって、同じような症状のお子さんが、少しでも早く診断を受けて治療を受けられたらと願い記事にすることにしました。
足の痛み
息子が足の痛みを言い出したのは、10歳になる年の夏休みでした。バスケットボールのクラスの最中に足が痛いと言い出しました。そこで直ぐに、ファミリードクターの診断を受けに行きました。それでまず診断されたのが、成長痛 (Growing Pains)。その時点ではレントゲンすら取りませんでした。
成長痛
成長痛とは、成長期に起こる身体の痛みのことです。 主に、夕方から朝方の時間帯に痛みを訴えることが多いことが特徴として挙げられます。 また、朝には痛みが治まっていて、病院で検査を行っても問題がみつかることがありません。レントゲンでも異常が見つかることもなく、これと言って即効力のある治療法が無く、ある程度時間が経つと痛みも消えていくのがほとんどのケースのようです。お子さんで膝の痛みでドクターに行くと、まずはこの成長痛と診断されることでしょう。
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9月に入り、息子の足の痛みはひどくなる一方、走ることが出来なくなり、足の裏の痛みも訴えていましたので、もう一度ファミリードクターへ。今度は偏平足という事で、Podiatrist (足の専門医)を紹介されました。この時初めて足の専門医がいることを知りました。
偏平足
扁平足とは、足の裏にある土踏まずが潰れ、足裏が平らになった状態です。 激しい運動をする人は痛むこともありますが、病気と呼ぶほどのトラブルはありません。 土踏まずは大人になるにつれて徐々に高くなるため乳幼児の頃は誰でも扁平足です。大抵の場合、痛みを和らげる為に 靴の中に敷くインソールを勧められます。軽ければ市販のインソールでも十分ですが、オーダーメードで作ることもできます。勤め先のベネフィットで費用を出してくれる場合もあるようです。
息子の足は確かに偏平足だったので(実はリウマチの為に腫れていた)、インソールを履くように勧められました。足の専門医にあった時には、息子の膝が赤く腫れて痛がっていたので、偏平足と膝の痛みは関係しているのか尋ねたところ、偏平足との関連はないと言われ、なぜか私の頭に「リウマチかも」って思いがあり先生に聞いたのですが、リウマチの場合は微熱が続くので、微熱がないなら違うだろうと言われました。
実は、微熱が続くのは大人のリウマチで、小児のリウマチの場合は微熱が出ないという事を後で知ることになるんですね。
この時点で、「リウマチ」と言う考えがかき消されてしまい、これもまた診断を遅らせる原因になってしましました。
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10月に入り、息子の足の痛みはドンドンひどくなりファミリードクターでレントゲンを撮ったものの異常なし。出来ることはフィジオセラピーしかないと言われました。その後、学校への5分の道のりも、杖を突いて歩くようになりました。
一週間後、絶対何かがおかしいと思った私たち夫婦は、ファミリードクターにもう一度訪聞いたところ、この前問題がないと言われたレントゲンに影が見つかり、骨髄炎の疑いがあるから、血液検査に行ってくれと言われました。
骨髄炎。
骨髄炎は、通常は細菌、抗酸菌、または真菌によって起こる、骨の感染症です。 細菌、抗酸菌、真菌が血液を介して、あるいは近くの感染組織が開いて汚染された傷から広がり(こちらの場合が多い)、骨に感染することがあります。 患者には骨の一部の痛み、発熱、体重減少がみられます。治療法は 抗生物質の点定期投与です。大抵の場合は 治療後よくなります。
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血液検査の後、炎症示す白血球の数値が高く、骨髄炎の可能性があるので、専門医へ紹介すると言われました。通常専門医からの連絡は、直ぐには来ません。数週間もしくは数ヶ月先になることもあります。
骨髄炎の場合は待っていてもそんなに長くなかったかもしれませんが、息子が足の痛みを訴え始めてこれまで既に3ヶ月が過ぎていましたので、これ以上は待つことが出来ず、そのままBCチルドレンホスピタルの救急病棟に連れて行きました。
今でも、この判断をして本当に良かったと思います。それからは全てがとんとん拍子に進みました。そのまま入院を勧められ、骨髄炎であるかどうかの精密検査を二日間受けました。結局、血液の中に細菌が見つからず、骨髄炎ではないという事でした。
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それで下された病名が JIA (Juvenile Idiopathic Arthritis) 若年性特発性関節炎。
息子の場合、典型的な JIA の症状では無かった為、はっきりした診断ではありませんでした。
JIA (Juvenile Idiopathic Arthritis) 若年性特発性関節炎
「若年性特発性関節炎」 ( juvenile idiopathic arthritis:JIA ) は、その名の通り、16歳未満のこども ( ≒若年性 ) に起こり、原因が分からず ( =特発性 ) 、関節炎の症状が6週間以上続く病気です。所謂、こどものリウマチです。自分の免疫が、関節の健康な細胞を攻撃することにより 炎症を起こしてしまう病気です。治療法は、ステロイド剤の投与、抗リウマチ薬(免疫を下げる作用)を使用します。 治療を続けることにより、18歳頃までに、寛解(かんかい:症状が発生していない状態)できるケースもあります。
治療
息子はその後、MRIの検査も直ぐに受けることが出来、その結果多くの関節(膝と足)に炎症が起きていたため、ステロイドの局部投与の施術を受けることになり、全身麻酔で治療を受けました。
その後ステロイド剤の服用を1サイクルし、抗リウマチ薬(免疫を下げる作用)メトロトレキサートを暫く服用しましたが、お腹が痛くなる副作用の為、脂肪に打つ注射に切り替え数年治療をしました。
思ったように炎症を抑えることが出来ず、違うタイプの抗リウマチ薬エンブレルを使いました。この薬は何と一本$350するんですね。これを週に一回。
その後エンブレルのジェネティックバージョン(代替え薬)エラルジーとメトトレキサート両方をするようになり今現在に至っています。このエラルジー、凄~く沁みて痛いそうです。
抗リウマチ薬は、肝障害を起こす可能性もあるので、3ヶ月に一回は血液検査をし、定期健診に行っています。お薬の面やBCチルドレンホスピタルの先生方には大変お世話になっており、この点に関しては、本当にカナダに住んでいてよかったなぁと心の底から感謝するのみです。
残念ながら、息子の場合は寛解には至りませんでしたが、最初の血液検査の時は大人4人で押さえつけ無ければできなかった息子が、毎週の凄~く沁みる注射にも耐え、血液検査も全く動じなくなった今、成長を目にして嬉しいのと同時に、普通の生活を送れる状態を維持できる医療が存在する時代に生まれて本当に幸運だったとも思います。
そうは言っても、前にも言った通り、診断を受ける面で、もっと気を付けていれば、炎症がこれほど酷くなるまで進んでいなかったのではないかという思いも否めません。もう少し自分からできることもあったのではないか、悔やんでなりません。
息子は、リウマチと診断されて以来、リウマチ以外でも大きな病気ではありませんが、私達が経験したことのない病気にる事がよくありました。普通だったら気にしないでいい事が異なる疾患に繋がったりする事がある為、その度に、BCチルドレンホスピタルの救急病棟に連れっていきました。
皆さんも、何かおかしいと思ったら、長く待たずに精密検査の要求を自分からするようにしてください。同じ思いをされる親御さんが一人でも減ることを祈っています。