バンクーバーで始める手作り石鹸:材料調達と基本レシピ

バンクーバーに暮らして十余年、季節の移ろいを感じながら、自然由来のものを生活に取り入れたいと思うようになりました。カナダの冬は空気が乾燥しやすく、肌や手のトラブルに悩まされることも少なくありません。そんな中で出会ったのが、手づくり石鹸という選択肢でした。

最初は興味本位で眺めていたものの、市販品に含まれる添加物の多さに少しずつ疑問を感じ、自分で石鹸を作ることに挑戦してみたのが数年前。今では家族の肌にも合う石鹸を手づくりできるまでになりました。本記事では、私が実践してきた材料の調達先や、初めての方でも取り組みやすいレシピの一例をご紹介します。

手づくり石鹸に必要な基本材料

石鹸を自分で作るうえで、まず知っておきたいのが基本となる材料です。市販の入門書を見ると数多くの油脂や添加物が紹介されていますが、初めての方は脂肪酸の名前を見ただけで圧倒されてしまうかもしれません。

基本となるのは、植物性の油脂、水酸化ナトリウム、そして水分です。水酸化ナトリウムは劇物扱いになるため取り扱いには十分な注意が必要ですが、コールドプロセス製法で作る石鹸には欠かせません。日本では苛性ソーダと呼ばれているもので、薬局や一部のオンラインストアで手に入ります。

このほか、精製水やハーブティー、保湿成分を補うためのオプション材料(蜂蜜や牛乳、米ぬかなど)を加えることもあります。目的に合わせて少しずつ自分の好みに調整していくのが、手づくりの大きな面白さです。

バンクーバーで手に入れられる油脂の種類

カナダでは菜種油やココナッツオイル、オリーブオイルといった油脂が比較的入手しやすい環境にあります。特産品でもある菜種油は、地元産を選ぶことでフレッシュな風味と質の良い石鹸を作ることができます。

コストコや大手スーパーでは大容量の食用油が手に入りますが、石鹸作りには香りや添加物の少ないピュアオイルが適しています。パッケージの成分表示をよく確認し、「100% pure」と明記されたものを選ぶのがポイントです。

アジア系の食料品店ではココナッツオイルが豊富に売られていますが、高温で精製されたものは石鹸に向きません。エキストラバージンやコールドプレスといった低温抽出のオイルを選ぶことで、風味と保湿力を保つことができます。バンクーバーを離れて足を運ぶなら、ビクトリアへの1日旅の際に現地のセレクトショップを巡るのもおすすめです。

水酸化ナトリウムの安全な入手と取り扱い

石鹸作りにおいて最も注意が必要なのが、水酸化ナトリウムの扱いです。強いアルカリ性を持つため、直接肌に触れないようゴム手袋やゴーグルが必須となります。

バンクーバーには化学用品を扱う専門ショップがあり、薬剤師に相談すれば適切なグレードのものを教えてもらうこともできます。日本からの輸入品を通販で取り寄せる方法もありますが、到着までに時間を要するため、現地での調達のほうが手軽です。

使用する際は必ず水を先に入れ、水酸化ナトリウムを少しずつ振り入れるのが鉄則です。立ちのぼる蒸気は必ず吸い込まないよう、換気のよい場所で作業することが大切です。小さな子どもが周囲にいる時間帯は避け、安全な環境を整えてから取り組むことをおすすめします。

基本的なコールドプロセス石鹸のレシピ

初心者向けのレシピとしては、オリーブオイルとココナッツオイルをベースにしたシンプルなものから始めるのがおすすめです。油脂の配合は好みの硬さや泡立ちによって調整していきます。

基本的な配合の一例として、オリーブオイル500ml、ココナッツオイル250ml、水酸化ナトリウム約100g、精製水250mlを用意します。油脂を湯煎で約40度まで温め、水酸化ナトリウムを精製水に溶かした液体も同程度に冷ましてから混ぜ合わせます。

泡立て器でゆっくりと撹拌し、トレースと呼ばれるなめらかなクリーム状になったタイミングで香料やオプション材料を加えます。これを型に流し込み、保温しながら24時間から48時間ほど置いて固めます。カット作業は少し力を要しますが、自分の手で作った石鹸が形になる瞬間は何度体験しても嬉しいものです。

型選びと熟成期間の過ごし方

石鹸を流し込む型には、シリコン製の専用型、木枠、あるいは牛乳パックを再利用したものなど、家庭にあるもので代用できます。

カナダで手に入るシリコン製の石鹸型は、キッチン用品を扱うお店やクラフトショップで見かけることが多くなりました。デザイン性のある型を選べば、見た目にも美しい石鹸ができあがり、ギフトにも喜ばれます。

型から出してカットした石鹸は、風通しのよい場所で4週間から6週間ほど熟成させます。これは鹸化反応をゆっくりと完了させ、pHを安定させるために必要な工程です。バンクーバーの湿度は季節によって変動するため、夏場は特に風通しに注意して乾燥させる必要があります。熟成を待つ間も石鹸作りの楽しみは続きます。配合をノートに記録したり、次のレシピを構想したりするのもまた一興。カナダでの暮らしには石鹸以外にも余暇の過ごし方まで含めて、多くの選択肢が広がっています。

手づくり石鹸を暮らしの楽しみに

石鹸作りを始めてから、家族の入浴タイムがぐっと豊かなものになりました。香りや形を少しずつ変えていくことで、季節ごとの楽しみ方ができるようになったのも大きな変化です。

バンクーバーで買える材料を組み合わせて、自分だけのレシピを探求していく過程そのものが暮らしの彩りになります。最初は戸惑うことも多かった水酸化ナトリウムの扱いも、今ではすっかり手慣れて自信を持って取り組めるようになりました。

カナダ生活において、手づくり石鹸は心にも肌にもゆとりをもたらしてくれる存在です。基本のレシピから少しずつ形にしていけば、バンクーバーの空気と手づくり石鹸の相性が暮らしのなかに新しい楽しみを加え、家族の会話にも自然と花が咲くはずです。