ワーホリから永住権へ 私が Vancouver で歩いた具体的なステップ

バンクーバーに住み始めて十数年がたちました。今では近所のカフェで顔を覚えられ、隣人に採りたての野菜を分けてもらうような毎日を過ごしていますが、二十代の頃はワーキングホリデーのビザを握りしめて、空港の到着ロビーに降り立ったばかりの一人でした。英語も仕事も頼れる知り合いもゼロからの出発で、滞在期限のスタンプひとつひとつが、とても重く感じられたのを覚えています。

そのとき取得した一年限りの滞在資格を、どうやって永住権につなげるのか。当時の私にとって情報は断片的で、帰国か延長か、永住申請か、選択肢の見え方がまったく分からなかったことを覚えています。本記事は、私が実際に通った道を時系列で整理し、同じ立場の方の参考になればとまとめたものです。カナダの移民制度は年度ごとに更新されるため、申請要件や配点は変動します。記事内の内容はあくまで私が体験した範囲の記録ですので、最新情報は必ず IRCC(カナダ移民・難民・市民権省)の公式情報で確認するようにしてください。

制度を選ぶ前に、まず自分の条件を書き出してみることをお勧めします。年齢、学歴、職歴、語学力、カナダでの滞在歴という五つの要素が、ほぼすべてのルートで共通の判断軸になります。この記事では、それぞれの段階で私が何を優先したのかも、できるかぎり正直に書いていきます。

ワーキングホリデーで渡加を決意した日

日本の大学を出たあと、最初に就職したのは都内の小さな出版社でした。編集の傍らで読み耽っていた旅行記の中に出てきたバンクーバーの街並みが、いつの間にか頭の隅から離れなくなっていました。思い切ってワーホリの制度を調べ始めたのは、社会人二年目の秋のことです。

当時のワーキングホリデービザは、年齢制限と国籍制限を満たせば抽選ではなく先着で取得できるプランが多く、私はオンラインで必要書類を揃え、申請から数日後に承認メールを受け取りました。渡航費用を抑えるために、出発の一か月前からシェアハウスを調べ、空港近くのホテルに一泊だけ泊まる計画を立てたのを覚えています。

空港に着いた瞬間の空の色と、湿度のない空気に驚いた記憶は今でも鮮明です。到着初日に道を尋ねたとき、相手の人がゆっくりはっきり話しかけてくれた経験が、その後の英語学習の支えになりました。永住権取得を最初から強く意識していたわけではなく、「まずは一年、この街を観察する」という気持ちでカナダ生活を始めました。

一年の終わりに見えた次の選択肢

ワーホリでの滞在が半年を過ぎた頃、将来のことを真剣に考え始めました。雇用主からは「契約社員として延長しないか」という提案をいただいたものの、ビザの期限が来れば帰国しなければならない現実があります。

帰国を迷っていたときに、同じシェアハウスに住んでいた日本人から「PNP」という言葉を教わりました。Provincial Nominee Program、州推薦制度のことです。ブリティッシュコロンビア州が特定の技術職や労働者の候補者を推薦し、永住権申請への加点や別ルートにつながる制度だと説明を受けました。カナダ全体のポイント制とは別の選択肢がある、という発見は当時の私にとって衝撃でした。

同時に、留学という道も見え始めました。ワーホリのあとに学生ビザへ切り替え、専門学校や大学へ通うことで、卒業後に就労ビザと永住権への道筋が開けるというルートです。私は最終的にこのルートを選択し、六か月の語学学校の後、ローカルのカレッジでマーケティングを専攻しました。通学中に記事一覧を読みあさり、他の人の体験談に何度も励まされたのを覚えています。

語学スコアと学歴の準備にかけた一年半

永住権への最短経路とされる Express Entry のポイント制を意識し始めたのは、カレッジ一年目の冬です。総合ランキング制(CRS)のスコアは、年齢、学歴、語学力、雇用経験などで決まります。なかでも語学スコアは配点が大きく、努力でカバーしやすい項目でした。

IELTS General Training を受け、最初はオーバーオール 6.5 だったスコアを、半年間の対策後 7.5 まで引き上げました。対策に使ったのはオンラインの模擬試験と、地元の図書館で借りた IELTS の対策本、そして毎朝のリスニング習慣です。スコアを伸ばすために何より効果があったのは、スクール外で英語を使う場面を増やすことでした。

学校側の就職サポートや現地企業でのインターンシップも積極的に利用しました。三か月の有給インターン先が見つかったときは時給も業務内容も考慮され、後の CRS スコアにも加算されました。学歴と語学とカナダ国内での就労経験、この三つを揃えるのにかかった期間はおよそ一年半です。

Express Entry に登録してから ITA を受け取るまで

ポイント制での永住申請は、まずプロファイルを作成し、プールと呼ばれる候補者リストに自身を登録します。定期的に行われる抽選で高得点者が選ばれると、Invitation to Apply(ITA)、つまり申請への招待状が届きます。

プロファイル作成自体は無料ですが、書類の不備はそのままスコアの下落や却下につながるため、雇用証明書や学歴の英語訳、語学スコアの有効期限などは慎重に揃えました。提出直前には、雇用主から過去の職歴を証明する reference letter を発行してもらい、内容に齟齬がないか何度も読み合わせたのを覚えています。

ITA を受け取ったあとは、九十日以内に正式申請を済ませる必要があります。写真、指紋、健康診断の結果、犯罪経歴証明書の取得など、リスト化されたタスクを一つずつ潰していく日々でした。期限が近づくにつれて焦りが出たため、申請書類の最終チェックは信頼できる行政書士の手を借りることにしました。

永住権承認とコープへの第一歩

申請を提出してから数か月後、移民局から「Confirmation of Permanent Residence」の通知が届きました。画面上のステータスが「Approved」に切り替わった瞬間の安堵感は、今でも忘れられません。

ただし、紙の永住権カードは別途郵送されるため、承認後すぐに海外へ出ると再入国の際に問題が出ることがあります。私もカードが届くまでのあいだは、日本への帰省を少し遅らせました。カードが届いた翌日には、LANDED IMMIGRANT として正式にカウントされる手続きを済ませ、住民登録や健康保険、税制上の扱いも順次切り替えました。

永住権取得後の最初の課題は、住まいと仕事です。私は永住権を活用して、それまでのインターン先と正社員契約を結び直しました。バンクーバーの住宅事情は厳しく、物件探しには秋のおすすめドライブコースのような近隣探索の記事が思わぬヒントになったこともあります。季節ごとの風景を知ることで、住みたいエリアの選択肢が広がりました。

永住権取得後に感じていること

数年が経過し、今は家族とともにバンクーバーで暮らしています。永住権を持ったことで、住宅ローンの審査や子どもの教育、職種の選択など、人生の選択肢が一気に増えました。ワーキングホリデーで渡ったあの年から振り返ると、遠回りに見えた語学学校やカレッジでの時間は、結果として永住への最短ルートだったと感じます。

これからを目指す方に伝えたいのは、制度の選択肢は一つではないということです。ワーホリからの延長、留学生としての進学、州推薦制度、カナダ国内での雇用経験、いずれも複合的に組み合わせることができます。私のルートはその一例にすぎません。同じ道を選ぶ方もいれば、別のルートを選ぶ方も、きっといるはずです。

申請前に揃えておくと便利な基礎書類

申請中に起こりがちな落とし穴

この記録が、同じ志を持つ方の何かのきっかけになれば幸いです。